確定申告でお預りする資料に含まれていることのある
「退職所得の源泉徴収票」
退職金をもらった場合の所得税や住民税の課税方法
確定申告との関係はどうなっているのでしょう
退職所得の源泉徴収票は、従来のサイズ(A4の4分の1)です
退職金は退職所得として課税される
いわゆる退職手当や退職に基づいて支給される一時金などは、退職所得として、他の所得と区分して税額を計算し、退職金の支払者がその税額を源泉徴収するため、原則として確定申告は必要ありません。
つまり、所得税が課税される場合でも、すでに退職金から所得税が天引きされて、その残りが退職者の手にわたっているのです。
実務的には、退職金については所得税がかからずに済んでいる方もすくなくありません。
これは、退職所得は長年の勤務の対価として受け取るものであり、老後の生活保障の視点から所得税が軽減されているためです。
退職所得の金額は、次の通り計算します。
(退職金等の収入金額-退職所得控除額)×1/2
軽減のひとつは、退職所得控除額の存在。
これは、退職金の支給を受けた会社での勤続年数を計算し、勤続年数に応じて計算します。
退職所得控除額は、
- 勤続年数が20年以下の場合は、勤続年数×40万円(最低80万円)
- 勤続年数が20年を超える場合は、(勤続年数-20年)×70万円+800万円、です。
つまり、勤続年数が長く、退職所得控除額が大きくなると、退職金の額より退職所得控除額のほうが多いケースがあります。この場合は、退職金には税金がかかりません。
また、もうひとつの軽減は、2分の1課税である点です。
(退職金等の収入金額-退職所得控除額)がプラスであったとしても、その金額にまるまる税金がかかるわけではなく、その金額を2分の1した額に課税されます(特定役員退職手当等を除く)。
なお、以上は「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出している場合であり、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合には、退職手当等の支給額に対して一律に20.42%が源泉徴収されるので、確定申告によりこの税額を精算します。
住民税の課税方法
個人住民税は、前年の所得に対して翌年6月以降に課税されるため、退職した後に税負担がかかることはよく知られています(翌年度総合課税)。
しかしながら、退職金については、原則的には、その発生年に課税します。
これは、一般に、退職所得は退職後の事業資金や生活資金に充てられること、退職者は退職した年の翌年には収入が減少するのが通常である点を考慮してのことです。
具体的には、退職後に課税される場合の税負担と重圧感を考え、源泉徴収の対象となる退職所得ついては、退職金をうけとる時に、所得税と同様に、個人住民税も天引きされます。
天引きされた個人住民税は、やはり所得税と同様に、退職金の支払者を通して納税します。
前述した所得税で求めた退職所得の金額に対して、個人住民税でかかる税率は、市町村民税6%、都道府県民税4%のあわせて一律10%。
扶養親族の有無や、退職金の金額の大小によらず、しかも、一律10%とは、軽視はできない税負担です。
確定申告をしたほうがよい場合
これまで述べてきたとおり、退職所得については、適正な源泉徴収が行われていれば、申告しないことを選択できる申告不要制度が設けられています。
しかし、退職所得は、国内の銀行預金の利子所得のように源泉徴収だけで課税関係がおわり、確定申告をすることができないものではありません。
このため、その年に事業所得等に赤字がある場合には、確定申告をして損益通算(赤字の所得と退職所得の金額を相殺)することもできます。
また、給与所得や事業所得、不動産所得など、他の所得から引ききれなかった所得控除がある場合には、確定申告することで税金が取り戻せることもあります。
なお、退職所得を確定申告する場合には、確定申告書の第三表も使用、退職所得に関する事項を記入します。
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