退職により勤務先から受ける退職手当などにかかる
所得税と住民税
退職金の支払いの際に天引きされるのは同じですが
確定申告をして戻る可能性があるのは所得税のみです
退職金にかかる税金の計算方法
個人が受け取る退職金にかかる税金は、所得税と住民税です
これらの税金は、原則として、次のように計算します
(退職金などの収入金額(※) - 退職所得控除額)× 1 / 2 = 退職所得の金額
(※)所得税や住民税がひかれる前の金額
退職所得控除額とは、勤続年数20年以下の場合は、40万円×勤続年数、
20年を超える場合は、800万円+70万円×(勤続年数-20年)で計算(最低80万円)
この退職所得の金額に、所得税であれば所得税の税率を、住民税であれば住民税の税率をかけて求めた各税額を、勤務先が計算し、退職金支給時に退職金から差し引いて税務署や市区町村に納めるのが通常です(※「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出している場合)
所得税の税率は、5%から45%の7段階に区分され、金額が多いほど税率が高くなっています
一方、住民税の税率は一律10%です(内訳は都道府県民税4%、市区町村民税6%)
退職金にかかった所得税が還付される場合
退職所得は、原則として他の所得(お給料や事業で稼いだ所得など)と切り離して、税額を計算します
「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合、上記のとおり計算された所得税と住民税がひかれるので、基本的に確定申告をする必要はありません
しかし、退職した年の給与所得などの金額がすくない場合、事業所得や不動産所得に赤字がある場合などで、退職年の退職所得以外の所得から所得控除額(社会保険料控除や扶養控除など)を引ききれないときには、退職所得を含めて確定申告をすることにより退職金にかかった所得税の還付をうけることができます
住民税は戻らない
退職金の所得税が還付されるのであれば、住民税も戻ってくるの?と思うかもしれません
ところが、退職金の支払いをうけるときに、所得税と同じように天引きされる住民税については、還付はありません
これは、住民税は、所得税の退職所得の取扱いとは異なり、所得控除などの適用はなく、会社が退職金から住民税を特別徴収して課税関係が終了するためです(これを「現年分離課税」といいます)
住民税は「前年」の所得をもとに計算されることはよくしられていますが、こと退職所得に関しては退職金支給時に天引きして終わり、ということになっているのです
退職者は退職した年の翌年には収入が減少するのが通常で、税負担を先延ばしにするのを避けるという配慮もあり、退職金については退職に伴い所得が発生した年に課税することになっているのですが…
世帯でかかった医療費や家族の扶養状況などを考慮する所得控除が利用できず、一律10%というのは、個人的な事情がまったく考慮されないということ
地方公共団体の事務負担の関係もあるのでしょうが、所得税と住民税の違いを感じますね
なお、退職年に不動産所得・事業所得・山林所得で損失(純損失)が生じている場合、所得税確定申告では退職所得と相殺して純損失が生じていなくても、青色申告者であれば、別途、住民税の申告書を提出して、住民税で純損失額を申告し、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除することができます
***編集後記***
所得税のよいと思うところは、医療費負担や障害、家族の扶養など個人的な事情も考慮する点
それだけに、趣旨とかけ離れた節税スキームは好みではありません
・・・このブログ記事の内容は、投稿時点での法律や状況に基づいて記載しています。本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行ってください。・・・
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