不幸にも老親が相次いで亡くなった場合
相続税の計算や遺産分割協議書
相続登記はどうなるのでしょうか
配偶者の相続税額の軽減の適用
短い期間に連続して相続が発生した場合、遺産分割の方法によっては相続税額が大きく変わる可能性があります。
たとえば父が2か月前に亡くなり、不幸にも今月母も亡くなった場合、父の相続について母は配偶者の相続税額の軽減を適用することができるのでしょうか。
父の死亡時に母が存命ですので、父の相続税の申告において、母が相続した財産に対応する税額は、配偶者の相続税額の軽減の適用を受けることができます。
順番に考えてみましょう。
父の遺産分割に関しては、母も相続人としての権利を有します。
しかし、父亡き後まもなく母も亡くなると、母は実際に父の遺産分割の話合いをすることができません。このような場合には、母の相続人(たとえば子Aと子B)が父の相続人の地位を引き継ぎ、父の遺産分割について、結果として、子Aと子Bが話合いを行います。
最終的に、財産を取得するのは子Aと子Bであっても、父の財産の一部を母に相続させ、父の相続税の申告において、母が相続した財産に対応する税額は、配偶者の相続税額の軽減の適用を受けることが可能です。
母が取得した相続財産は、母の相続税の申告における相続財産となり、同じ財産が短い期間に2回相続で移転することになります。
母の固有財産がそれほど多額でない場合には、あえて父から財産を相続して配偶者の相続税額の軽減を適用し、その後、子Aと子Bに相続させる方法をとることは、最終的に相続税額の圧縮につながる可能性があります。
このような場合には、全体を考えて遺産分割の話合いをする必要があるのです。
遺産分割協議書は別々に作成する
重ねて相続が発生した場合、全体を考えて遺産分割の話合いをする必要があると前述しました。
ただし、全体を考えるといっても、父の相続と母の相続は別々なので、遺産分割協議書も別々に作成したほうがわかりやすいです。
父の遺産分割協議書の作成の際に、母がすでに亡くなっている場合では、子Aと子Bは、父と母の両方の相続人に該当するため、署名押印欄には「父〇〇相続人 兼 母◇◇相続人 子A」などと記します。
重ねて相続が発生した場合の不動産登記
父の遺産分割において、母が父亡き後まもなく他界した場合でも、母が父から不動産を相続することも可能です。
母が不動産を単独で相続し、さらにその不動産を子へ相続させる場合には、父から母への中間の相続登記を省略し、父から直接子へ相続登記することが可能です。
このような中間の相続登記の省略は、一般的な不動産売買の時にはできませんが、この事例のように、死亡した母に所有権を移し、その後に子に所有権を移転させるような場合には、例外的に中間の相続登記を省略することが可能です。
なお、中間の相続登記を省略できるのは、その不動産が単独の所有となるケースですので、父からの相続の際、母と子で共有で相続する場合には、中間の相続登記を省略できません。
重ねて相続が発生するケースは珍しいですが、全体をみつつ、ひとつずつ手続きをすすめましょう。
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